新作物語…長編です

今回は、ラッキークラフト会報誌であるエンジョイグローバルネットワークマガジンより抜粋します。私の思いを書きましたので長文ですが是非最後まで読んで頂きたい。



新製品3種類の解説と物語です。
このルアー達は、私がラッキークラフト様と契約する遥か昔の10年近く温めてきた子達です、それ相当の物語もあります。
最近のルアー市場の変化は早く、目を見張る前に消えていってしまう傾向にあります。毎年毎年メーカー品からガレージキッド品、はたまた外国品を入れると相当の数が発売されています。その中には、もの凄いルアーなのに“時流”に乗らないと話題にすら上がる前に消えていってしまうモノもあります。気になるルアーの検証をする時には、新たな気になるルアーが続々と登場をして“検証”もままなりません。そして気が付くと記憶からも消えていってしまいます。また、プロショップとはいえ有名メーカーのルアー以外を陳列するところは減って手に入れ難い状況も検証する事から遠避けています。ハードルアーだけでも追い掛ける事が難しい中、ソフトルアーを含めればプロアングラーとはいえ整理整頓する事は至難の技でしょう。そんな中での新製品の3種類の発売はドキドキします。

「これは凄いルアーだ」と思う商品を世に出すには、商品化する為の手順があります。これが現場と開発とでは果てしなく遠い場合が多々あります。既存品を改造したり、弄るのは簡単なのですがオリジナルとなるルアーの開発は気の遠くなる作業だと思います。その作業を繰返しトライ&エラーを経てやっとの思いで世に出てきている現場を何度も見ていて、私は性格では無理と思っていたので自分のコンセプトに合わせて市販品のルアーに悪戯を施したモノを使って何とかトーナメントシーンを乗り切ってきました。
ラッキークラフト様と契約が出来た関係で今回は最初から取り組んでオリジナルなボディーから細部のパーツ決めをしてカラーを選定のお手伝いをしました。
他のルアーメーカー様の開発や商品化までの時間はわかりませんが私は天邪鬼な性格なので納得しないと次に進めないので時間が掛かりました。
契約したから考えたのではなく、私は10年の歳月を掛けて温めてきたルアーを2種類と、稚魚を捕食しているバスに対応させるミノーを1種類の合計3種類のルアーを提案し商品化となりました。
ただ果たして私の考えたルアーは「オリジナルになりうるのか?」という疑問があり正直わかりません。私の想像力と妄想力と直感を信じて商品化しました。釣りの世界のターニングポイントであるエサ釣りからルアーによる釣りの誕生を通してバスフィッシングが生まれて一世紀以上です。世界各国の釣りキチガイ達の産んだルアーは星の数です。奇想天外、奇天烈、奇抜に斬新という冠を持つ世界のルアーを見ると驚かされる事が多い事でしょう。過去にそんな天才達により原型があったかもしれませんが、そこはご愛嬌で宜しくお願い致します。
 さて、下記の3種類を発表します。
・ SHINGO−ワンダー(サイレンサー
・ SHINGO−Wスクリュー
・ Bevy Pointer

というルアー達です。




「どこが他と違うの?」



それでは、各々解説をして行きたいと思います。



・SHINGO−ワンダー(サイレンサー)…
私にとっては10年以上も昔にクリアーレイクで釣りをしていた時の出来事です。当時の流行でスティックベイトが盛んに行われていた影響で私も会得しようと練習をしていました。左右に飛び回るトリッキーな動きのルアーを狂ったようにバイトするバスを釣る興奮は今でも忘れませんが、バイトが遠のきキャストした腕も、手首も痛くなり散漫にキャストを繰返して適当にキャストした時に視界の隅にデカバスが映ったのです。


「いたーー!!デケッーーぞ…」


慎重に仕留める為に、視線はバスにロックしたままキャストしたルアーを、見つけたデカバスにプレッシャーをかけないようにゆっくりと回収してアプローチをかけようとして、ゆっくりとリーリングをしていたルアーに別のバスが不意にアタックし、偶然にもフッキングしてしまいました。偶然とはいえ、まあまあサイズのバスがフッキングしファイトしていた経験が始まりだと思います。当然、狙っていたデカバスは悠々と逃げていきました。
その時は「あーー、デカバスを逃した!!」位にしか思っていませんでしたが、それから数年が経った琵琶湖ではヤマセンコー6インチのノーシンカーをウイードの上に落としてバスを釣って居た時に近くでボイルが起こり、回収してはボイル目掛けてキャストをしていましたがなかなか釣れない「もう少し近くでボイルしてくれたら釣れるのに…」そんな思いでキャストして次のボイルを探しながら何気なくゆっくりとルアーを回収していたらズンッと押さえ込まれるバイトがありバスを手にした事である事実に気が付いたのです。
さらに、河口湖でも似たような事を経験したりして、この釣り方の確信が出来ました。そしてベースとなる理論も出来上がりました。
面白くなりソフトルアーハードルアーで再現出来るように様々なルアーに悪戯をしては実釣を繰返していました。
それから数年後のJBワールド(TOP50)の長野県木崎湖戦ではメインパターンで挑める程の自信とルアーが未完成ながら出来て準優勝を手にしました。
ココから本格的にルアーを弄りました。当時の原型となったルアーは、ワンダーやHMKLのジグミノーです。オリジナルのワンダーもジグミノーも若干ですが動きます、この動きを抑えていき真っ直ぐにしか動かなくなるまで悪戯していった時に光が見えました。同時にHMKLのK−1・65をミスキャストし岩盤エリアにぶつけてリップが折れた状態で、偶然にもバスを釣った事も大きな収穫でした。この話はHMKLの泉和摩様も知っていて可能性の話で盛り上がり「きっとスレンダーポインターでも…」との可能性を感じました。そこでスレンダーポインターのリップを改造したモノで同じように試した2008年の河口湖B戦で準優勝をして確かな手応えを感じました。
さらに追い討ちを掛けたのは釣りビジョン様の『ラッキーバスタード・パート1、パート2』という番組でも使いピンチを救ってもらい信頼が増大してきました。なんせ限定されたハードルアーだけでバスを釣る番組で溺愛するサイレントベビシャをメインで釣って行く中でのリアルなピンチを救ってくれています(笑)。

そんな経歴を持って2008年の9月にウォブリングやローリングをしないで釣れるルアーの雛形が完成したのです。
ジャンルはミノーにあたるのでしょう。
しかし、世の中に受け入れられるかどうかは疑問です。なんせ動かないように、動かすルアーなのですから…しかし私の杞憂みたいです。
釣れる理由はバスに聞いて下さい(笑)。
私の推測するところフィッシュイーター系の魚の本能の一部を刺激するという事がわかりました。ただし、「スイッチを完全に入れないでバスを始めとするフィッシュイーター達がルアーにチョッカイを出してしまう」そんな感覚なのです。
『水面直下を真っ直ぐに泳がないように動き続けるモノ』これが最大のキーでありメインキーです。
バスに限らずにトラウトもシーバスも同様に釣れました。これからこの手のルアーをリリースするメーカーが間違いなく増えてくる事でしょう。それ位に釣れました。
この『水面直下を真っ直ぐに泳がないように動き続けるモノ』にもいくつかの形体があり、それぞれにサブのキーがあります。このサブのキーが今後の課題でしょう。
ココまで理解した時に壁にぶち当たりました。
雛形を量産する為に商品化してみると、微妙に泳いでしまうルアーが上がってきました。この動かないですがアトランダムに勝手に超微妙にロールする動きを出すのに手間取りました。今までのルアーはいかに動かすかが勝負でしたから…。
最終的にSHINGO−ワンダー(サイレンサー)は、私の妄想と想像のオリジナル形状をカタチにしてもらい動きもアイディアで押さえました。メインキーは押さえ、サブキーとして背中のフィンが直進性と水面直下での“ある作用”を勝手に起こせるようにしました。キャストしてロッドを縦気味にしてリールをスローからスローミディアムの速度で巻くだけでワンダーサイレンサーが勝手に仕事をします。時折水面に背中が出るか出ないかの誘いをリーリング速度で調整して下さい。するとバスのスイッチが完全に入らないまま何気なく追従してきたり、近付いて来たかと思うとパクッとバイトしたりと様々ですが非常に楽しめる事でしょう。
バイトしフッキングしてもあまり暴れませんが、ファイトの途中で急に暴れ出す事が多いですので気を付けて下さい。これは、ファイトの途中でスイッチが入ってしまったのではと思いますのでランディングまで楽しめます。





・ SHINGO−Wスクリュー
次に考えたのがサイレンサーに追従してきたバスを釣り逃した時のモデルです。「追従して来たバスが何故にバイトしないのか?」スイッチが完全に入らないまま追従してきてバスがバイトする瞬間に“何か”を感じて反転したりする事を解消できないかと考えてシンキングのWプロップベイトをイメージしてプロップ構造にする事で自重も稼げて飛距離が出るのと、回転するペラの抵抗により引き抵抗を付けて風や流れでも安定した動きを維持する事ができる。そしてペラの回転によって水のヨレが発生しフックやルアーのシルエットを暈して水流迷彩なる効果ができるのではと考え付いて弄っている時にガンクラフトからスクリューベイトが発売になった。その話を私の事情を知る後輩から聞いた時は心臓が飛び出る位に驚いた。「まさか…ガンクラフトって…どんなコンセプトで作ったのか…」とガンクラフトというメーカーに興味を抱きました。
もしかすると発売してもコピーと言われたら悲しいのと、ガンクラフトとの付き合いもないので確認のしようが無い為、悶々とした日々を送って「このルアーはやめるか…」と日夜苦悩していた姿を見ていた友である小川健太郎君が突然「なんなら和歌山のガンクラに行きましょう!」と簡単に言った時も驚きましたが、その場でガンクラフトに電話して行く日を決めて、ガンクラフトのある和歌山県田辺市に2008年の横浜Fショーの帰りにオガケン(小川健太郎君)と一緒に車で走った奇跡の行動力に驚きました、しかも釣具満載で「途中、ガシラや太刀魚の良い釣り場がありますから…」いかにもオガケンらしい。
車中でも、この手のルアーの有効性や特性をオガケンなりに分析して貰ったりしても「間違ってないぞ!!」という自信が沸きました。
濃密な打ち合わせのような車中でしたので10時間のロングドライブもあっという間に感じ、夜中にガンクラフトに到着し、代表の平岩孝典様と挨拶をして様々な話をしました。その中で私の考えているシンキングWプロップ(当時の仮名)の雛形ルアーを見せながらコンセプト等を話し、平岩様からはスクリューベイトの核心やジョインテッドクローの核心を教えて頂きました。私の考えるサイレンサー、Wスクリューは水面直下で使用し潜らせても30cm位と考えています。スクリューベイトは水深5mを中心としてディープエリアでの使用を目的として開発して商品化したルアーだそうです。メインキーである『真っ直ぐに泳がないように動き続けるモノ』は同じ意見でしたが狙うレンジの相違、サブキーの違いがわかりました。またこの平岩氏との邂逅をきっかけに親交も自信も深めました(笑)。ルアーのネーミングも敬意を払ってWスクリューとしました。(プロップやペラでなくスクリューとしての役割がしっくりくるので)
この縁がなければ完成は無かったと思うと恐ろしく感じます。そんな出会いを作ってくれた友人であるオガケンとは一生付き合って行く事でしょう。
雛形の未完成品とはいえ完成に近いWスクリューを1年間各地のフィールドで試しては微調整をしたモノをラッキークラフトの開発や技術の方々に提出しました。
やはりサイレンサーもWスクリューもなかなか理解してもらえずトライ&エラーの繰り返しが続きました。使い方はサイレンサーと同じですが水面に出ないようにスローにリーリングして下さい。釣りビジョン様の『ラッキーバスタード・パート2』では最終プロトでスローにリーリングしてナイスバスを仕留めていますので参考になるのではと思います。
ようやく製品化となり皆様の前に登場します。


最後に・Bevy Pointerです。
これは、私の“もしもシリーズ”がカタチになったルアーです。私が昔にHMKLでルアーの勉強をしていた時に泉和摩様が「SHINGOちゃん、ベイトフィッシュって実物は小さくて細いんだよ、それをルアーとして飛距離や動きを与えると別モノになってしまうんだよ…(注・勉強は今も続いています)」この言葉がきっかけです。泉さんはハンドメイドルアーの第一人者であると同時に日本人で初めてアメリカに参戦した人でもあります。「アメリカのトーナメントの話やルアー開発の話を聞いて燃えない男は漢(オトコ)ではない」と思える位に面白い話ばかりです(注・いつか話します)。
その勉強からラッキークラフトにはポインターという釣れるルアーがあります。

「もしもサイズは様々ですが日本のベイトフィッシュであるワカサギ、モロコ、オイカワの稚魚(60mm前後)を模したルアーをポインターでできれば釣れるのでは…」


ある程度特殊な状況下での使用になるかもしれないが…そんな稚魚を追い掛け回すバスに何度も遭遇しました。そんな状況ならHMKLのK−1・65、50で釣るのですが、数本いるバスを1本、2本は釣れますが擦れるためバイトが止まります。小さいバスから釣れて来る傾向があるように感じ肝心のナイスサイズを釣る事が出来なかった時が何度かありました。少しスイッチの入ったバスを釣るには同じ細長いサイズのミノーで泳ぎが違うモノが欲しい…で生まれたのがBevy Pointerです。
稚魚は思いの他に身体を動かして泳ぎますが、長くは泳がないで止まります。
このアクションを意識してやる事でバスのバイトが得られました。

大場所での勝負ではなく、近所の野池や、スレ気味のフィールドでバスを釣る。
初心者と一緒でも安心して投げさせて下さい。様々な魚を釣る事でしょう。



ようやく3種類が製品化となり皆様の前に登場します。
何度も言いますが、これらのルアー達は“時流”となるでしょう。
私が密かに温めてきたコンセプトのルアーを山木一人君も温めていたようです。友人であり悪友でもある山木君のジャッカルからリリースされている「セイラミノー」の出現や、THタックルの天才・濱田禎二君のところからもリリースされている「ブライス」の出現からも片鱗が伺えると思います。サブキーの違いで古今東西問わず、また魚種を選ばずに各方面で影響を与える事でしょう。それ位に可能性のあるルアーと確信します。

今後各メーカーで続々と登場する中でサブキーが重要な役目を果たす事は理解出来たと思います。サブキーのコンセプトを理解し使い手が使い分ける楽しみが増える事でしょう。どれが一番なのかが問題ではなく、いかに遊べるかが大事なのではと私は思います。そんな中でSHINGOのベイビーシリーズがタックルボックスに入って皆様と一緒にフィールドに行けたら非常に嬉しいですし、思い出に残るバスを釣ってくれたらさらに喜びに変わります。

最後に、無知な私の無謀なアイディアを形にする為にお付き合い頂いた開発の皆様、私を支えて下さる方々に感謝します。さらに、HMKL(ハンクル)の泉和摩様、ガンクラフトの平岩孝典様、小川健太郎様。その他の多くの方々のお陰でもあります(注・表に名前を書けない方々に感謝致します)。

そんな物語のルアー達ですので店頭で見かけましたら宜しくお願いします。